会社のご案内 − 私たちの目指すもの
創立者ヴォーリズの言葉
William Merrell Vories
一柳 米来留 [ 1880〜1964 ]
建築家は永続的な満足を受ける機会に恵まれています。建築家の仕事はほとんど永久的な記念碑となり、物質的な収入に勝る枯れることのない満足をたえず受けるからです。
私達はまず、日常生活のために使用する、快適で健康を守るによい能率的な建物を熱心に求めている建築主の意を汲む奉仕者となるべきです。
私達の主張するところは、建築様式の人を驚かせるような新しい発案ではありません。私達が一貫して守り続けて来たことは、簡単な住宅から複雑で多様な目的を持った建築に至るまで、最少限度の経費で最高の満足を請け合うために確かな努力をして来たことです。
住宅は本来住むためのものです。同様に言えば、学校は教育的計画のための家として考案された道具です。病院は病人の自然な回復力を助けるための機械です。商業建築は能率的な業務運営の中心です。このような建築を個人的な気まぐれや思いつきで着飾り、自己宣伝のための広告塔や博物館向きの作品のように心得て設計すべきではありません。
建物の風格は人間の人格と同じく、その外観よりもむしろ内容にあります。
私達の事務所は、一人の人のための舞台ではないということは、今さら言うまでもありません。建築は芸術と科学の結合であり、今日のような時代にあっては、耐震、耐火、衛生、空調など建築の適切な設計と技術について唯一人の人に期待するということは無理というものです。しかしながら、それぞれの専門家達をたづね廻るのもうまい方法とは言えません。唯一の解決策と思えるのは、必要とされるすべての専門家達が、その中で自分の考えを表現し、相互に助け合うような良い内部関係を持った組織を設けることです。
昭和十二年三月一日 ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
− 「ヴォーリズ建築事務所作品集」序言より抜粋 −
私たちの目指すもの
創立者、W.M.ヴォーリズは1905年にキリストの宣教をこころざして来日。1908年、京都YMCA会館の工事監理業務を手始めに、建築設計監理事務所を創業しました。その後、メンソレータムなどを製造販売する近江兄弟社を経営するほか、近江サナトリアム、近江兄弟社学園など、医療・教育にも事業活動を展開します。こうした事業は収益を目的としたものではなく、ヴォーリズのキリスト教伝道活動そのものでした。
建築設計の分野においても、建築家として自己主張することを強く戒め、「日常生活の使用に対して、住心地の良い、健康を譲るによい、能率的建物を要求する熱心な建築依頼者の需に応じて、我々はその意をよく汲む奉仕者となるべきである。」とし、「設計者の個人的名誉がその建築によって如何に左右せられようと、それは末の末のことである。」ことを信条としました。
「建築物の品格は、人間の人格の如く、その外観よりもむしろ内容にある。」とするヴォーリズは、合理的な考え方を徹底したモダニストでありましたが、単に、実用性を十全に満足する建物、つまり、身体的なレベルで人間の欲求、必要性を満足する建物を作れば良いとする、機能主義という言葉の誤った用法からは無縁のものでした。
人は身体的存在であると同時に、精神的存在であるということを大切な課題として建築を計画し、その詳細な部分に徹底しました。「我々は自分の建物を造るが、つぎにはその建物が我々を造る。」と言う建築家ソビックの言葉がありますが、ヴォーリズも同様に、「もしも建物がその設計において、建物において、充分均整のとれたものであれば、感情的にも道徳的にも何等かの感化を与えるはずである。・・・その最も重要なる機能の一つは、(そこに生活する)人々の心の中に、洗練された趣味と美の観念を啓発することでなければならない。」と記しています。
私ども、一粒社 ヴォーリズ建築事務所は、このヴォーリズの願いを継承し、設計の基本姿勢として建築活動を行なっています。