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音楽家ヴォーリズ #9 小さな音楽会
2006年6月7日
1930年(昭和5年)頃といえば、東京や大阪などの大都市ならいざ知らず、地方の小都市に外国から輸入されたオルガンやピアノがあること自体、大変めずらしいことだったに違いない。
しかし近江八幡には、ヴォーリズが多くの欧米文化の風をはこんでいた。 写真のオルガンもそうしたひとつで、現在も近江八幡教会で現役として用いられている。
ヴォーリズが発行していたマスタードシード(1936年)はこのオルガンが奉献された時のことが詳細に報告されている。寄贈者はELLA MATSON ANDREWSという方で、寄贈にいたる経緯が詳しく述べられている。
オルガンのお披露目コンサートが近江八幡教会で催されたのだが、マスタ−ドシ−ドにはその時のプログラムが紹介されている。
オルガン演奏者はヴォーリズ。またヴァイオリン独奏は前回ご紹介した高木五郎である。
これは単なる教会の集会でなく、公開された音楽会であったとが報告書からは分かる。
こうしたことを通して、ヴォーリズが小さな日本の小都市で紹介した音楽が、当時の人々にも文化の香りをもたらしていたことを思うとき、そこには建築や製薬、医療、教育などの実業家ヴォ−リズ像とはちがった新たな顔が見えてくる。
口を一文字に閉じた硬い表情で伝えられる「偉人」でなく、穏やかに、やさしく微笑み、時を隔てた今も慕われている「ヴォーリズさん」なのだということを。
・・・つづく